竹内 日本流クビ切りメソッドという奴ですかね。スタンフォードでも教えてくれないすごいメソッドですね。まず、同じ事業で困っている同業他社と、「3社で一つの会社をつくって、シェア回復をめざす」とか、幻想を持たせる。
本当かどうかわかりませんが、電機メーカーが代わりばんこにババを引いているように映るんです。ディスプレイでA社がババを引いたら、その代わりにA社が捨てたいと思っている別の事業を別のB社が引き取ってあげる。お互いに不要部門、不採算事業をぐるぐると回しているように見えます。もちろん、偶然でしょうけど。
結果的に、皆でコストを払っていますよね。場合によっては、政策投資銀行のような国の金融機関を通じて税金も投入される。すぐにリストラすればそこで清算されたのに、それをしないことで日本全体、産業界全体でコストを払っているわけですよ。これを続けていく悪い点は、産業界全体が疲弊していくことです。
"竹内 実は、私は東芝の社長になりたいと思っていたんですよ。ですから、技術だけをやるのではなく、MBAにも行ってマネジメントも勉強していたんです。けれども、内部から会社を変えていくのはとても難しいことだと悟ったんです。
いまや1事業部だけが儲けて、9事業部は負け戦
ちきりん 先生から見ても、中から変えていくのは難しいと思える状態なんですね……。日本の大メーカーって今、本当に、希望が見えないですよね。
竹内 いま、多くのメーカーでは10の事業があったら、せいぜい1つの事業が儲けていて、残りのほとんどの事業は赤字を垂れ流しているような状態ではないでしょうか。だから従業員でいえば、90%の人は消耗戦を戦っているわけです。たまたま1つ儲けている事業部があれば、その他の事業の人も食べていける。
東芝だと、フラッシュメモリがありますよね。もし、フラッシュがなかったら東芝だってひどい状態ですよ。シャープも少し前までは液晶が飛び抜けてよかったけれど、いまはダメですね。
ちきりん 死んでいる事業を経営者が切り捨てられないということですね。GEのジャック・ウェルチ氏のようには大ナタを振るうことができない?
竹内 会社って、本当に変えるためには、潰れるところまでトコトンいかないと、反対者が周りを囲んでしまって無理なんですよ。ウェルチのときだって、GEがほとんど潰れるところまでいっていたから変えられたと思いますよ。
ちきりん ということは、日本のメーカーは当時のGEよりまだ余裕があるということですか?
竹内 今まではメーカーも余裕がありました。80年代に絶頂を誇っていた電機や半導体事業も、90年代から少しおかしくなり、21世紀に入ってからはあれよあれよと見る間に凋落していったんです。ただ、メーカーというのはエンジニアで決まるところもあります。たとえ経営者の手腕がどうであれ、エンジニアさえヒット作を打ち出せれば、それなりに生き延びられる構造なんです。
ちきりん シャープでいえば液晶、東芝ならフラッシュのように、エンジニアが頑張っていい製品、技術をつくりあげてしまうと、経営者がダメダメでも企業全体としては延命するということですね。
竹内 いま、シャープはコアの液晶事業まで業績不振に陥ったから、台湾のEMS大手の鴻海精密工業に出資をあおぐ形で救済してもらった。赤字の事業はやめればいいと思いますが、国内に工場もたくさんあるし、従業員もたくさん雇っている。だから、会社全体の売上にそれらの部門が貢献していないからといって、それらの事業・人を切れるかというと、日本の社長はこれをなかなか断行できません。
たとえトップが決断したとしても、各事業部ごとに担当者がいるわけで、「殿、ご乱心召されるな!」ということになって全員で止められてしまうわけですよ。だから、本当に潰れるような危機的状況にでも陥らないかぎり、内部から変わっていった例は見たことがない。これは日本企業だけではなく、世界のどの企業でも同じような状況ではないでしょうか。
"ある会社の現場のエンジニアが、何とも現状をうまくとらえた発言をしていた。その一つをご紹介しよう。
「大企業病にどっぷりとつかっているため、業績不振とはいっても、現場には危機感がない。また、良くも悪くも、何でも関係者すべてで物事を共有してから決定する文化だから、事業のスピードが遅い。このような状況下で、グローバル競争に勝てる気がしない」
これが多くの日本メーカーにおける現場の実感なのだろうか。
エンジニアの見識と技術、それは会社をまたいで持ち運びができるだけのポータブル・キャリアでなければならないのではないか。さらに言えば、世界の共通言語となり得る「技術」を武器にできる職業の代表格がエンジニアであるという自負を持つならば、たかが英語ごときができないという理由で、グローバル企業への転職に二の足を踏んでいて、本当にそれで良いのだろうか。
英語ができないから海外で働けない(外資で働けない)と言うのでは、せっかく身に付けた「見識や技術」が泣いていないだろうか。世界のどの国にしても、エンジニアという職業に従事している者こそが、まさに最もグローバル人材に近いところにいるはず。
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